Site Meter
【産業動向】再利用ロケットの技術とコスト TrendForceレポート
2025-12-26 10:53:11
調査会社TrendForceは2025年12月22日、再利用ロケットについてのレポートを公開。米スペースX (SpaceX)によるスターリンク(Starlink)衛星コンステレーションの配備拡大や、米宇宙軍(US Space Force)による国防衛星の定期打ち上げ需要を背景に、スペースXはこれまでの「部分再利用」ロケット技術から「完全再利用」への移行を加速しているとした。また、再利用ロケット技術の進展により、商用ロケットの打ち上げコストが中長期的に低下することが予想されるとし、欧州アリアンスペース(Arianespace)、三菱重工業(Mitsubishi Heavy Industries)、中国航天科技集団(CASC)といった従来型大型ロケットメーカーも、第1段ロケット再利用技術の検証に対する投資意欲を高めているとした。


レポートでTrendForceは、目下、使い捨て型ロケットの平均打ち上げコストが約1億1000万~1億8000万米ドルに達している一方、部分再利用ロケットは約6700万米ドルまで減らすことが可能だと指摘。主要ロケット各社が再利用技術の高度化を進め、完全再利用が実現した場合、1回あたりの打ち上げ費用は200万~500万米ドルになるとした。

再利用ロケットの現状についてレポートは、スペースXの主力ロケット「Falcon 9」について、第1段回収方式を採用し、燃料には航空灯油(RP-1)と液体酸素(Liquid Oxygen)を使用しているが、第1段ロケット回収後に内部に残る炭素残渣の清掃作業が必要となり、運用コストの一因となっていると指摘。このため同社は2025年10月に実施した「Starship」の第2段回収試験で、航空灯油に代えて液体メタン(Liquid Methane)を採用し、残留燃料の清掃回数を大幅に削減することで、整備負担の軽減を図ったと紹介した。

レポートはまた、米国ではスペースXが大型商用ロケット打ち上げ市場を主導しているのに対し、中国では中国国家航天局(CNSA)が複数のロケット打ち上げ計画を策定し、中国航天科技集団(CASC)が「長征」シリーズロケットの打ち上げを担う体制だと指摘。「G60計画」に含まれる低軌道(LEO)衛星や地球観測衛星を既存の衛星軌道へ投入し、国家プロジェクトを中心に運用している他、中国のロケットメーカーも再利用技術の検証を進め、垂直着陸による回収効率の向上に注力しているとした。

この他、再利用ロケット技術の課題については、部分再利用ロケットでは回収用燃料を事前に確保する必要があるため、搭載可能な通信ペイロードが相対的に少なくなるとした。また、完全再利用を実現するには、専用回収プラットフォーム等のインフラ整備に追加投資が必要になるとした。ただ、これらの課題は、今後の技術革新やビジネスモデルの進展によって克服可能だとの考えを示した。

台湾系企業の参入についてTrendForceは、長年にわたりCNC(コンピュータ数値制御)加工と精密部品製造分野で実績を積んできており、一部企業は米GE Aerospace、米Pratt & Whitney、仏Safran GroupといったTier 2の大手航空機エンジンメーカーと協働し、民間航空宇宙レベルのボルトやナット等の金属ファスナーを供給していると指摘。今後、国際的なロケットメーカーのサプライチェーンに本格参入するためには、宇宙グレード認証(Space-Grade Certification)の取得に加え、小ロット生産、高度なカスタマイズ、頻繁な設計変更といった要求に応える必要があるとした。



【関連情報】

【EMS/ODM】マザーボードECS開発のOBC、キューブサット百合三号に搭載で低軌道への投入成功
【産業動向】ネットワーク通信機器UMT、LEO向け受注激増 ベトナムと台湾で増産
【EMS/ODM】クアンタ、衛星通信システム開発CesiumAstroに1500万米ドル
【産業動向】台湾企業の宇宙衛星取り組み 鴻海・コンパル・UMT・MTI
【半導体】スペースX、先進封止FOPLP参入の報道 台湾メディア

中国・台湾市場調査ならEMSOneにご用命ください。台湾のシンクタンク、TRI社との共同調査にて、最新の情報をお届けいたします。 先ずはこちらまでご相談ください。

※EMSOneでは日系企業様に向け、コストダウンに向けた各種アウトソーシングサービスの提案を行っています。EMS或いはODMを通じたコストダウンについては こちらをご覧ください。